第10回能代宇宙イベントが,2014年8月15日から23日にかけて行われた. 今大会は第10の記念大会ということで,一般公開日に新規コンテンツ等を導入することで,歴代最多となる3,000人超の来場者数を記録した. 例年に比べ曇りがちな天気が多く,全日程を通して実験を実施できるか心配されたが,ロケットおよびCanSatいずれの実験もすべて実施することができた.
1.全体スケジュール
今回は一般公開日に体験型コンテンツを設けて,より大勢の方々にイベント参加団体の日頃の活動を知って頂くために,イベントの中日である日曜日に行った. そのため,ロケット,CanSatいずれの団体の学生も成果発表等を行い,大変に盛り上がる大会となった.
日程 | 内容 |
---|---|
8月15日(金) | UNISEC缶サット競技1日目/大学生ロケット陸打上実験 |
8月16日(土) | 開会式/UNISEC缶サット競技2日目/大学生ロケット陸打上実験 |
8月17日(日) 一般公開日 |
<能代宇宙イベント一般公開日> UNISEC缶サットデモフライト/デモ走行/大学生ロケット陸打上実験/秋田県中学生モデルロケット大会/水ロケット大会/モデルロケット打上体験/大型モデルロケット公開打上 |
8月18日(月) | 宇宙甲子園(ロケット甲子園/缶サット甲子園)/大学生ロケット陸打上実験予備日 |
8月19日(土) | 大学生ロケット海打上実験リハーサル/宇宙甲子園予備日 |
8月20日(火) ~8月22日(金) |
大学生ロケット海打ち実験実施 |
2.会場準備
会場準備はイベントが始まる3日前の12日より実施した. 秋田大学より物品を第三鉱滓堆積場に搬入した. イベント会場はCanSat競技等を行う“本部”とロケット打上げ実験を行う“射場”に大きく分けられる. 陸打ち実験を行うロケット団体は実験のリハーサルを行うために, 13日までロケット団体は“射場”のランチャ等の準備を行った. 14日からはCanSat団体が合流し,“本部”の会場設営,CanSat競技に必要なバルーンの準備,競技会場の草刈り等を行った. 一般公開日以降の18日には陸打ち実験で使用した“射場”の物品を海打ち実験で使用する“射場”に移動した. 海打ち実験では最高到達高度が10kmで,高度を目指す団体が実験を行う. 今年は特に高高度化を目指す団体が増えたために,これまで5mであったレール長が10mまで拡大した新規のランチャを設置した.
3.ロケット打上げ(陸打ち)
7団体8機のロケット打上げ実験が行われた. 当初15日から実験を行う予定であったが,明朝から雨が降りかつ風が強かったために中止判断が下った. 翌日16日はCOREが2機打上げ,ロケット打上げ実験初挑戦の芝浦異衛星チーム,また東海大SRP,東北大F.T.Eが打上げ実験に臨んだ. 17日の一般公開日では,九州大PLANET-Q,筑波大STEP,和歌山大WSPが打上げ実験を成功させた. 今年の陸打ち実験では全てのロケットが定刻に打上がり,全団体が実験に臨むことが出来た.
日程 | 内容 |
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16日 | 東海大 |
CORE_B | |
芝浦衛星チーム | |
CORE_A | |
17日 | 筑波大 |
CORE_B | |
芝浦衛星チーム | |
CORE_A |
4.技術交流会
8月15日の夜には学生による技術交流会が行われた. 本イベントでは,日頃ロケットとCanSatそれぞれを開発している団体が集まるために,それぞれの団体が持っている技術の共有,意見交換を行う. また日本全国から団体が集まる本イベントでは,ロケット打上げ団体同士,CanSat団体同士の技術交流も活発に行われた.
5.開会式、懇親会
8月16日の朝には開会式を,夜には懇親会を行った. 開会式では能代宇宙イベントの開催に伴い,多大なる協力を頂いた来賓の方々から,学生に向けて熱い思いを伝えて頂き,懇親会では学生の競技結果の表彰やこれまでの能代宇宙イベントに携わった方々に学生から感謝の意を伝えた.
6.CanSat競技
CanSat競技は15日,16日に行う予定であったが,15日は悪天候により中止した. 一転,16日は天候に恵まれ,競技を実施できた. 今回はバルーンとCanSatキャリアとを滑車で繋ぐ事で,レギュレーションを円滑に進め,それによりエントリーした27団体全てをバルーンから放出することが出来た. また例年能代宇宙イベントのCanSat競技では“ローバータイプ部門”“フライバック部門”の2部門が設けられている. これらはCanSatが指定したゴールに向かうものであり,カムバックコンペと呼ばれるものである. これに加え,今年はカムバックコンペにこだわらずアイディアのユニークさを来そう“ミッション部門”を新設した. 以下に競技結果を示す.
団体名 | 記録(m) | 制御履歴 (あり○、なし×) |
順位 |
---|---|---|---|
東京都市大学 宇宙システム研究室 | 56.42 | × | |
電気通信大学 フライト部隊 | 71.11 | ○ | 優勝 |
名古屋大学 NAFT 紅 | 85.2 | × | |
静岡大学 SATT | 94.95 | × | |
芝浦工業大学 芝浦衛星チーム Albatross | 棄権 | × |
団体名 | 記録(m) | 制御履歴 (あり○、なし×) |
順位 |
---|---|---|---|
鳥取大学 T-SAT | 36.4 | × | |
九州大学 PLANET-Q | 37.56 | ○ | 2位 |
日本文理大学 NBUprojectチーム | 1.72 | ○ | 1位 |
芝浦工業大学 Hopper’s_A | 27.34 | × | |
東京理科大学 So-seki | 22.05 | × | |
筑波大学 Run 太郎 | 45.09 | NA | |
芝浦工業大学 芝浦衛星チーム アインス | 47.06 | × | |
会津大学 | 38.53 | ○ | 3位 |
芝浦工業大学 Hopper’s_B | 48.05 | × | |
北海道科学大学 佐鳥研究室 | 42.15 | × | |
新居浜高専 Green Earth Japan | 40.97 | ○ | |
芝浦工業大学 芝浦衛星チーム Comet | 47.97 | ○ | |
芝浦工業大学 芝浦衛星チーム Hexat | 42 | ○ | |
九州工業大学 KITCATS | 49.32 | × | |
九州大学 SATELLITE-Q | 51.07 | × | |
慶應義塾大学 Keio Team Wolve’Z | 23.9 | × | |
CORE(インカレ団体) CORE 缶サット班 | 45.47 | × | |
高知工科大学 KRP | 69.8 | × | |
慶應義塾大学 LYNCS | 45.67 | × |
団体名 | Mission (達成○、未達成×) |
順位 |
---|---|---|
東京科学大学 Helios | × | |
大阪府立大学 小型宇宙機システムセンター | ○ | 優勝 |
東京農業大学 Lightus | × |
7.一般公開日
8月17日には能代宇宙イベントのメインイベントでもある一般公開を行った. 今年も昨年と同様に司会を専門とする方にお越し頂き,Tシャツコンテスト,学生へのインタビューを行われて非常に盛り上がった. また水ロケット打上げ大会,55機の小型モデルロケット同時打ち上げを行った. また第10回ということで,今回は来場者の方に日頃私達学生が取り組んでいることにより触れて頂くために,体験型のイベントを設けた. CanSatの操縦,フィルムロケット等,非常に多くの方がイベントにお越し頂いた. 過去最高.
8.ロケット打上げ(海打ち)
陸打ち実験を終えた18日に“射場”を旧落合浜に移し,今年から新規に導入したレール長が10mのランチャの準備を行った. 19日早朝には実験で使用する海岸を,打上げ団体の学生の手で清掃活動を行って実験に備えたが,悪天候により20日の実験は中止となった. 翌21日は海打ち実験を行う全団体が実験に備え,秋田大,東海大,筑波大,東京科学大学,複数大学のインカレ団体であるM-IIプロジェクトの合計5団体が午前中に全て打上げ実験を行った. いずれの団体もランチャをロケットが正常に離脱したが,東海大だけがパラシュートの展開に成功し機体の回収に成功した. 他4団体については,ロケットの上昇中に機体上部が分解,もしくはパラシュートが放出されずに弾道落下した. 打上げ実験終了後は,ロケットの回収にご協力頂いた地元漁師の方々との懇親会を開催し,第10回能代宇宙イベントは幕を閉じた.
8.ロケット打上げ(海打ち)
今年は例年と異なりUNISON代表がイベント代表を務めない体制を取ったが,全ての実験を終了することが出来た. これは学生代表だけではなく,イベントを学生自身が主体となって運営するという意識が年々UNISONに浸透しているためだと考えられる. 事実,10回目を迎えた能代宇宙イベントが終わると同時に,11回大会に向けた準備が学生主体で進められている.
本イベントの注目度は高まる一方で,今後イベントの大型化に伴い多くの困難が予想される. ただ日頃の活動の成果を披露する場として,次年度以降も継続してイベントを盛り上げて行ってくれることを期待する.