2006年の7月18日から19日にかけて開催された第一回国際GSNワークショップの報告です。
プログラム
- 第1回国際GSNワークショップについて
7月18日(火曜日)と19日(水曜日)の二日間にわたり、第一回国際GSNワークショップが東京大学山上会館にて開かれました。GSNとはGround Station Network、つまり「地上局ネットワーク」のことです。
この構想は、東大の小田靖久さんを中心としたメンバーが2004年度のUNISONプロジェクトに応募して採択され、プロジェクト化されたものです。
複数大学の地上局が協力しあうことによって、衛星運用の機会が増えたり、地上局が故障したときに助けてもらえたり、迅速に対応ができるなど、たくさんのメリットがあります。日本国内ではすでに実験を初めており、成果があがっています。ネットワークのメリットを享受するためには、地上局は世界のあちこちにあったほうがよく、国際化がどうしても必要でした。それで、2006年度からは、地上局ネットワークは、学生だけのUNISONプロジェクトから、UNISEC全体のワーキンググループとなり、国際ワークショップを開く運びとなりました。 - テクニカルツアー
ワークショップの初日。
7月18日の朝、山上会館ロビーに続々と海外参加者が集まってきました。東大中須賀研究室の地上局見学ツアーに出かけるためです。東大地上局は、海外参加者で満杯。XI-Vのプロマネを努めた船瀬龍さんから説明を聞いたあとに、XI-Vの実際の運用風景を間近で見学。その後は、中須賀研究室の手作りクリーンルームや設備を見学して、ツアー終了となりました。
- 日本語チュートリアル
海外参加者が見学している間、別の教室で、日本語チュートリアルのセッションが行われていました。ここでは、実際にコーディング作業が行われました。講師役には小松満仁さんや鈴木由宇さんらがあたり、小田靖久さん、中村友哉さんらがアドバイザーとしてつきました。
この日、作業は午前中だけでは終了しなかったのですが、懇親会終了後に全員が戻ってきて作業は深夜まで続けられました。
- 受付
今回、参加者は55名(学生37名、一般18名)でした。このうち、海外から参加したのは11名。国内参加者も、北海道や九州など全国から集まりました。受付では、翌日配布予定のProceedingsに収録する発表原稿も集めていましたが、参加者の協力のおかげで、初日にほぼすべてが集まりました。
また、午後のセッションまでの空き時間に、株式会社ソランによる「Spacecraft Management and Control System」のデモが行われました。
- 発表セッション
17日の午後と18日の午前中に、発表セッションが行われました。
司会は、プログラムコミッティチェアの坂本祐二さん(東北大学)ですが、Proceedings作成担当も兼ねているので、パキスタンから参加のMuhammad Imran Majidさんに司会をお手伝いいただきました。
Muhammad Imran Majidさん
Proceedings製作中の坂本さん基調講演では、3人の方にお話いただきました。
まずは、地上局ネットワーク構想をずっとあたためてきた小田靖久さん(東大)に、日本における学生の地上局ネットワークについて発表していただきます。
小田靖久さん次に、Kyle Leveque さん(California Polytechnic State University)が、昨日のUNISEC総会での発表に引き続いての発表。東大と結んで実際に地上局ネットワークの実験をしているだけあって、具体的なお話をしていただきました。
Kyle Leveque さんそして、ESAの教育オフィスからご参加のNeil Melville さんが、地上局ネットワークについて、ヨーロッパの立場からのご発表。9月にヨーロッパでGSNワークショップを企画されておられます。
Neil Melville さんその後、それぞれの取り組みや将来構想などの発表に続き、各大学の地上局紹介のショートプレゼンテーションが行われました。
- 懇親会
1日目が終了したところで、懇親会。
会場は安くて量が多い大学生協の食堂。大学衛星プロジェクトは余計なところにお金をかけないのがモットー。舌がなめらかになる魔法の水のおかげもあって、打ち解けた笑顔があちこちに見られました。 - ディスカッション
2日目は、発表セッションのあとで、ディスカッション。中須賀教授の司会のもと、活発な議論が繰り広げられました。GSNの有用性については、意見が一致しているのですが、やり方については、これから調整の必要がありそうです。特に、ESAは独自のGSN構築を考えているので、世界的に効率のよいシステム運用をするために、どうすべきか解を見つけていかなければなりません。そのための最初の意見交換の場として、今回のワークショップは役に立ったようです。
- 英語チュートリアル
ワークショップの最後は、チュートリアルセッション。
中村友哉さん地上局ネットワークで必須の遠隔運用を実現するソフトウェアGROWS(GSN Remote Operation Web Service)、地上局ハードウェアを制御するためのソフトウェアGMS(Ground Station Management Service)についての解説・実演を、開発者の中村友哉さん(東大)にしていただいた 後、各国からの参加者が実際にGMSのインストールにチャレンジしました。
また、日本の各大学の地上局メンバーらがインストラクターとなり、参加者に無線機やアンテナなどの地上局ハードウェアを制御するためのソフトウェア開発も体験していただきました。夕方に飛来するCubeSatの受信を目標にしているので、それまでに完成しなければなりません。インストラクターも各国の参加者も、みな真剣そのものです。
そして、いよいよ、本物の衛星からの電波受信を試みます。 外にアンテナを設置しないといけないので、雨だったら中止と心配されていましたが、幸い夕方には雨が小降りになりました。その場で組み立てて、地上局を設置して、パスが来るのを待ちます。
東京科学大学のキューブサットからの電波受信に成功しました。わかる人がビーコンを聞くと、ちゃんとCUTEと聞こえるそうです。
- 中須賀実行委員長の言葉
あっという間に二日間のワークショップは終了し、お別れの時間がやってきました。最後に中須賀実行委員長の胸の内を聞きました。
中須賀実行委員長「GSNは教育、衛星の効果的運用、アウトリーチなど実に多くの効果を期待できます。これからESAをはじめ、世界の各国と共同してGSNのアーキテクチャーを検討して行きますが、その冒険に日本が大きな貢献を果たすことを望んでいます。学生が自分の頭で考え、工夫して作ったものが発展していくこと、それによってより多くの人たちが宇宙開発・利用に参加できるようにすることで、停滞気味の宇宙開発に刺激を与え、宇宙利用に新しい道を作っていきたいと思います。それを世界中の学生たちと一緒にできるGSNの将来性に大いに期待しています!」