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 <人工衛星との通信チャンスを増やす>

 低軌道にある人工衛星の場合、ひとつの地上局では一回のパスにつき十数分程度の通信時間しか確保できません。つまり、人工衛星が軌道を一周する間に、ある一つの局が通信できるチャンスは非常に限られているのです。しかし、複数の地上局が協力すれば、人工衛星にアクセスするチャンスは大幅に広げることができます。例えば、ある人工衛星について、東京の局では、一回のパスで最大20分程度しか通信時間を確保できないのに対して、北海道の局と沖縄の局と協力できるとすれば、同じパスについて26分まで確保できるようになります。(*1)

もちろん、日本国内のみならず、世界各地の無線局と協力ができるならば、さらに通信チャンスは広がります。日本とヨーロッパの局が協力すれば、衛星が地球を一回周回する間に2回の通信パスが開ける可能性が出てきます。一つの局で15分程度の可視時間があるならば、国際協力する2局があれば合計30分まで増える可能性があるということです。(*2)いうまでもなく、世界中に協力する局が増えてくれば、一周あたりの可視時間はさらに増えてくることになります。また、可視時間が増えるのみならず、軌道上のあらゆる位置で通信チャンスが開けることから、さまざまな衛星運用の可能性が開けてきます。 例えば、超小型の衛星に搭載された高解像度のカメラの運用をみてみましょう。一回のパスではダウンリンクが難しいような大きな写真データを衛星が送信する場合、従来であればパスごとにデータを分割する必要があり、また、何回かのパスはデータ送受信のためだけに消費されてしまいます。つまり、「通信の待ち」のために運用に大幅な制約ができてしまうのです。これを回避するためには、ダウンリンクさせるデータのサイズを制限する必要に迫られます。写真データであれば、解像度の低下や、写真サイズの制限、あるいは撮影枚数の制限が必要ということになります。ここで、世界中に分散した地上局の協力によって、衛星が通過していく複数の地上局でばらばらのデータを受信させて、後で復元することができるようになれば、「通信の待ち」のような制約がなくなります。衛星からのダウンリンクデータの大きさの制限がなくなれば、写真のサイズの自由度が増しますし、撮影回数のチャンスも増大します。もしかすると、動画のダウンリンクさえ可能になるかもしれません。

 無線局の協力は可視時間の延長のみをもたらすものではありません。比較的近い場所にある地上局同士の協力は、通信の確実さをもたらします。例えば、ある地上局がメンテナンスを行わなければならないときに、近隣の地上局で協力があれば、メンテナンス中のパスにおいて通信を行ってもらうことができます。通信チャンスを逃さずに捉えることができれば、効率的な衛星の運用が可能になります。もちろん、地上局のメンテナンス中というような状況に限らず、Eスポ現象などによって通信環境がよくないときに、遠隔地と協力したいと考えることもあるでしょう。あるいは、近隣局であっても、同じパスについて通信路を複数確保することにより受信データの誤り訂正能力を、受信システムに持たせることができるという可能性もあるでしょう。

 もちろん、局同士の協力ということは新しい話ではありません。日本からのロケットの打ち上げを行うときは、種子島、沖縄、クリスマス島、南米チリ等の地上局によりロケットのテレメトリデータを受信しています。プロの衛星運用では、複数の地球局による運用は当然の状況です。また、多くのアマチュア衛星も、数多くのアマチュア無線家の受信情報が、衛星の捕捉や運用に貢献しています。これも、広い意味で局同士の協力といえるでしょう。

 とりわけ、アマチュア無線家の方々の情報提供による協力は大変すばらしい協力であり、2001年に行われた東京大学と東京工業大学によるCubeSatの遠距離通信実験時には、大変貴重なデータをいただきました。(*3) われわれの地上局ネットワークは、世界中の地上局を結ぶ世界的なネットワークによって、衛星通信のチャンスの大幅な拡大を実現することを目標とします。 では、われわれの目指している地上局ネットワークは、具体的にどのようなものになるのででしょうか?




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