キューブサット一歳の誕生日

2004年6月30日。
キューブサットが打ちあがって1年たったこの日、中須賀研究室では、ささやかなお祝い会が行われました。1年前からつづりはじめたこの物語。1年たっても、元気いっぱいのキューブサットのおかげで、まだ続きそうです。

まずは、中須賀研メンバーがよく行っている「ピグ」にて、ステーキあるいは焼肉を各自注文。ただいま、カンサット開発が佳境に入っているせいか、ビールを飲もうという声はあがりません。食事の後、深夜に向けて製作にいそしむには、アルコールを飲んでいる場合ではないようです。

夜10時に、ケーキでお祝いをすることになっていました。先生が自転車で買いにいってくれたショートケーキが2個ずつ9種類、合計18個あります。XI―IVにそなえる(?)ためのケーキを選びます。やっぱり、サイコロ型にしましょうということで、イチゴショートを二個並べて、サイコロ型にしてみました。ろうそくも一本立てました。

ホンモノは宇宙へ行ってしまっているので、エンジニアリングモデルをケーキと、ロシアで買ってきた記念のウォッカと一緒に並べてみます。

cake

「ちょっといけてないんじゃない?」の声に、ケーキを一個にして、部屋を暗くして本格的記念撮影。ケーキの角度を変えたり、キューブサットを台に載せたりおろしたり、背景の写真(1年前のロケット打上場面)にはりついているテープをとったりしたあとで、ろうそくに点火。みんな衛星を作るときと同じように真剣。この「いつも変わらぬ真剣さ」がなんともいえず好ましいです。

キューブサット、1歳の誕生日。おめでとう!

cake

ろうそくの蝋がケーキにたれ落ちているのを見かねて、火を消してしまった舟根さん。
「仏壇みたいな消し方するなよ」
「一本のろうそくをみんなで消す!」
というわけで、再び点火して、全員で一斉に息を「フーッ」とかけて、火を消しました。拍手が起こります。
「よく一年も持ったね」

写真撮影が終わって、やっとケーキを食べる段になりました。
「やっぱり、上からでしょう」との先生の声に、永島さんから好きなケーキを選びます。
彼が選んだのは、写真撮影に使った、ろうそくがたれ落ちているであろうケーキ。思い入れの深さがうかがえます。研究室に残っている学生の中で、キューブサットの開発に最初から携わった唯一の人物。大変なことをやりとげた人だけが感じる何かを、しみじみと感じておられるのでしょう。

パソコンに向かっていた江野口さんが、
「お誕生日おめでとうってメールがきてる」
「どこから?」
「コーネル大学だって」

それは、メールで送られるバースデーカードでした。

Congratulations on your first year in space! You have accomplished a great deal. We have enjoyed listening to your satellite as it passes over Ithaca, NY USA. We hope our satellites will join yours in space next January. Best wishes for Tokyo XI-V!

キューブサットをあげる大学は、世界中に広がっていますが、そのトップランナーが日本の大学だというのは、なんとも嬉しいものです。世界中の大学が、東大・東工大のキューブサットの大成功に刺激を受けて、がんばっているのです。

ロシアからのウォッカをほんの少しずつ飲んだあと、みんなで写真撮影。
「一周年だから、指一本」
ということで、全員同じポーズで写真におさまりました。

anniversary

キューブサット一周年の夜は、こうして楽しく更けていきました。

もちろん、お祝いが終わるか否かの間に、衛星製作作業に戻った学生も、一人や二人ではありませんでした。