打ち上げ延期の通知
語り手:匿名希望
● NASDA集中検討会 5月24−25日
つくば宇宙センターで、東大と東工大が合同でキューブサットの集中検討会をしたんです。NASDAの小型衛星の専門家にも集まってもらって、二日間びっちりの予定でした。NASDAのマイクロスペースシステム研の方々と、ウチのほうが9名、東工大から11名が参加しました。構造・環境試験・通信・電源・運用の分科会に分かれて、それぞれのプロの話を聞くという形式でした。その年の12月には打ち上げが決まってましたからね。もう、ウチも東工大も、どっちもやる気満々でした。
その最中のことでした。トイッグス先生からメールがきたんですよ。検討会のときにどうしてわかるかって?東工大の誰かが、携帯電話で受けられるようにしていたんだと思います。それで、なんと、打ち上げが延びたっていうんですよね。2002年の5月になるっていうんです。軌道も変更になって、650キロ太陽同期になるっていうんですよ。
● ふざけるなー!
私、そのとき、プロマネじゃありませんでしたから、もう、思い切り、怒りました。プロマネだったら怒りをおさえたと思いますが、今度は誰に遠慮をすることもないので、怒りまくりました。だって、今年(2001年)の12月に打ち上げということだったから、みんな寝ないで、すごく急いで仕事をしていたんですよ。それに、延期の理由が、OSSS(アメリカの打ち上げをアレンジしてくれる会社)の資金難だとか、はっきり言って、わけのわからん不可解な理由なんですよ。
CDR用の詳細情報を出せといわれれば徹夜で作って出したし、契約金を払えといわれれば、契約書をかわす前なのに律儀に払ったし(といっても、私が払ったわけでなく、先生が払ってくださったんですが)、こっちは誠意をつくして、できるだけのことをやっているのに、何が延期だー!ふざけるなー!!・・・という具合に、私は怒りました。
● 宇宙プロジェクトの宿命か?
しかし、考えてみると、どの宇宙プロジェクトをみても、延期というのは珍しくありません。ここは一つ、前向きにとらえて、今のキューブサットをもっとブラッシュアップする機会と考えることにしました。そうだ、ひとつも不安なところがないように、立派に作ってやろうって。
しかし、その後に、怒りを通り越すような出来事が待っていたんですよ、実は。でも、このときは、この善良なる学生の私は、そんなことは、予想だにしていませんでした。事実は小説より奇なり、と申しますが、本当だったんですね。
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