太陽電池パネルが貼れない?
語り手:澤田 弘崇 (さわだ・ひろたか)

キューブサットを宇宙へ打ち上げることになりそうだという情報が出てきて、フライトモデルの製作を急ピッチで進めました。ウチの研究室は、やると決まったときのやる気というか、追い上げはものすごいんです。日頃からやる気を維持しておけって?まあ、そうですね。

それはともかく、入手するのに一番時間がかかって、一番高い部品は、太陽電池パネルです。キューブサットのサイズにぴったり合うようなものはないので、特注です。3ヶ月は軽くかかるので、2002年秋に打ちあがるかもしれないと聞いていましたから、春には発注したと思います。薄くて割れやすい太陽電池パネルを金属板にはるのは、メーカーさんのほうでやってもらって、できあがったものを納品してもらうことになりました。

セルの形は2種類作りました。最初は4種類作ろうと考えていたんですが、コストが相当にかかるので、長方形と正方形の2種類にしました。発注して一安心と思っていたら、電話がかかってきました。ふたの裏側の部分に、10枚貼ってもらうことになっていました。はじから何ミリ以上あけないといけないという設計要求がありましたから、それに沿って作ったんですが、実際につくると、パドルをとめるためのでっぱりが、邪魔になってしまったようでした。「無理やり貼って貼れない事はありませんけど、ちゃんと機能するかどうかの保証はできません」と言われました。9枚でもいいじゃないかと思うかもしれませんが、ここは10枚貼らないと他のパネルと電圧が変わってしまうので使えないんです。まいったなと思う気持ちと、まあ仕方ないなという気持ちと半々くらいでした。もともと、相当ぎりぎりで設計していたからです。

太陽電池

じゃあどうしようかということで、いろいろ考えました。まずは、あるメーカーで新しいセルを作ったというので、それをキューブに載せてテストしたらどうかと考えました。それで、「テストしませんか?」といったら、「テストしてほしいものはありません」と言われたんですが、某宇宙機関の衛星に搭載予定のようです。学生のつくる衛星なんて本当に打ち上げられてデータがとれるのか?と信用されてなかったのでしょうね。そのときこっちにやらせてもらったら、もう結果が出ていましたね。その衛星はまだあがっていませんから。それから、貼らないという選択肢もありました。もう、電力は足りているし、わざわざ貼る必要もなかったわけなので、それも考えました。

でも、せっかくだから、9枚貼って、ヒーターにしようと考えました。ヒーターなら、電圧が違ってもかまいませんから。熱真空試験で冷えることがわかっていましたし、マイナス20度くらいで中の電池が動かなくなったこともありましたから、防寒対策は必要でした。それで、電熱線をはわせたお手製のヒーターをつくって、カプトンテープでとめました。カプトンテープというのは、薄い茶色のテープで、耐熱にすぐれているんです。

heatersoritan

このヒーターは、衛星が宇宙に出た最初のころはけっこう役に立ったと思います。怪我の功名ですね。その後、ずっと日向にいるので、ヒーターは特に必要なくなりましたが、一生懸命作ったもので、いらないものはないんだなという感じがしますね。