東京大学大学院工学系研究科航空宇宙工学専攻
中須賀研究室修士1年 永井 将貴
東京大学 永井 将貴
n 東京大学プロジェクト「CUBESAT1」「One Slot Pod」の報告、広報
n 九州大学率いるプロジェクト「QUEST」の進捗状況報告および、今後についての話し合い
n USSSにおいて新しいプロジェクトの模索、情報収集
n 東京大学プレゼンテーションで、プロジェクト「CUBESAT1」「One Slot Pod」の報告、広報
n 「QUEST」のディスカッションに参加。その場で、
l 今度のスケジュールの決定
l 各大学の仕事分担の調整
l 今までの反省を踏まえ、意思疎通の方法を調整
n 新しいプロジェクトの候補として「フォーメーションフライング」のディスカッションに参加
l 大学でどのような研究をしているのか報告
l 今後の協力について話し合い、その方向性は定めたが、具体的な活動には触れていない。
l 自分の研究室内の余力、研究の進み具合などを勘案し、今後共同研究をするかどうか決める。場合によっては、共同研究に参加しないこともある。
USSSでは、日本の大学のみでなく、アメリカの大学との連携をも可能にする非常によい機会だと感じた。言葉の壁はあるものの、今後のプロジェクトについての有意義な話し合いができたと思う。しかし、いくつかの問題点もある。
ひとつは、アメリカの大学と共同でひとつの衛星をつくる難しさを実感した。CUBESATやCANSATプロジェクトは、各大学がそれぞれ独自に開発することを前提とし、情報交換や基礎技術の点で協力し合うプロジェクトであるため、非常に高い成果を上げてきたと思う。しかし、「QUEST」では4つの大学がひとつの衛星を作るというプロジェクトであるため、
n 人やもの(衛星部品、本体)の移動が必要となり、時間的、金銭的コストがかかる
n プロジェクトを進める上での言葉の壁、時差の壁
n メールで情報をやり取りするため、返答までの時間的ロス
などの障害が生じる。
このような状況下で共同開発をする利点があるのかどうか疑問に感じた。事実、去年1年間はほとんど意思疎通がとれていない。1大学で開発したほうが効率的ではないかと感じた。今後、「QUEST」での成果と「CUBE,CAN」での成果を比較検討する必要があると思う。
二つ目の問題点は、プロジェクトの数である。当初のUSSSでは、各大学ともプロジェクトには参加しておらず、CUBE、CANといった新しいプロジェクトに積極的に取り組むことができた。しかし、今回のUSSSでは「CUBE、CAN」にすでに取り組んでいる大学も多く、新しいプロジェクトへの関心が薄いように感じた。また、すでにいくつかのプロジェクトを抱えた大学が、新プロジェクトへ参加する余力があるのかどうかも疑問だ。「すでに行っているプロジェクト」と「あたらしいプロジェクト」にどのような意味を持たせるのか、そろそろ考える必要があるのではないかと思う。
東京大学大学院工学系研究科航空宇宙工学専攻
中須賀研究室修士1年 中村 友哉
東京大学 中村 友哉
n 東京大学で進行中のプロジェクトの発表と,その進行過程で明るみに出た問題点の報告,またそれらの解決に向けての協力の模索
n 現在日本国内のみで構築が進む地上局ネットワークのアメリカへの進出(協力要請・技術供与)
n USSSにおいて新しいプロジェクトの模索,情報収集
n CubeSat1,ARLISS2002,地上局の各資料作成
n 地上局についての東大発表,また東大地上局の遠隔操作デモ
n 地上局ネットワークのディスカッションに参加。その場で,次のような項目について話し合った。
l ネットワーク構築にあたり問題点の洗い出し(アメリカ側からTime Sharingなどリソース面での質問が出た。今後の検討課題に)。
l SOAPを使った通信の説明・デモ(アメリカ側はそのシンプルな構成と高機能に驚嘆していた)。
l UNISEC-WSでアメリカ側が東工大の地上局を遠隔操作するというスケジュールを確認。
l その後3月に中須賀先生が訪米の際,日本からSanta Clara,Stanfordの地上局を経てアメリカにあるCubeと通信しようという計画を承認。
l ITAR(いわゆるExport License)問題について,解決の可能性を探る。North Dakota担当で調査を続行,逐次現状を報告。
l とりあえずハワイ大学が地上局を構築中ということで,日本側の技術を供与。日本側と密接に連絡を取りながら実験するという方向で一致。
USSSは,アメリカ側との意見交換が可能であり,多方面にわたる協力などを実現する上で非常に重要な会議であったと思う。特に私の参加した地上局グループでは,他国の参加がほぼ必須であり(日本国内のみでネットワークを構築しても効果は半分以下),アメリカ側と話す機会を設けることでこのチャンスを得られたことは非常に喜ばしいことである。今後このネットワークを世界中に広げていくための第一歩になったことと信じている。
今までのUSSSで挙げられていた問題点として,結局いろいろ決めても,そのうちあやふやになってしまうということがあった。特にMLだけ作って最初の挨拶して,はいさようなら,という事態をよく耳にしていた。それではUSSSなど開く意味がまったくない。そこで,今回地上局では具体的な日程を決めてしまい(たまたまUNISECのWSというよい締め切りが存在した),いついつまでに何をする(これも具体的な内容であるべき)というロードマップ,あるいはマイルストーンを作ってしまうことを行った。これが有効かどうかはまだわからないが,これでまた同じような事態が生じるのであれば別の有効策を考案する必要がある。
これはもちろん,国が違うため頻繁に会って話し合うことができないということが大きな壁となって存在している。メールだけの話し合いだと責任があやふやになり,返答しなくても誰も何も言わない,どうせ来年は違う人が行くんだし…,となってしまうことは明らかである。そこで,たとえば2〜3ヶ月に一度各大学に報告書の提出を義務付けてはどうだろうか。それを全体に公表させるようにすれば,否がおうにも進捗するのではないだろうか。これについては学生側が決めるというよりは,運営側からそういった提案がなされるのがよいと思う。
ともあれ,今回は非常に有意義な議論がなされたと信じている。来年以降もこの傾向が続くことを望んでいる。
東京大学大学院工学系研究科航空宇宙工学専攻
中須賀研究室修士1年 船瀬 龍
東京大学 船瀬 龍
n 東京大学プロジェクト「CUBESAT2」「ARLISS2002」の報告
n CUBESAT開発における、大学間協力の実現
n 東大CUBESAT2プロジェクトの概要と今後の課題について発表
n ARLISS2002のComeBack Competitionの結果と、栃木でのSpace Glider Competitionの結果を発表
n 「CUBESAT」ディスカッショングループに参加
l 各大学が抱える技術的な問題点について討論
これについては、東大としてはすでにCUBESATを完成させており、他大学に対して「うちはこうやって解決している」ということを話すだけにとどまった。
l CUBESAT communityとしての今後の方針を話し合った(議論の内容については、東大全体の報告書に書いてある)
l ディスカッションの進行役を担当した
l ディスカッションの結果を発表
まずはじめに、アメリカの大学との意見交換の場を持てるという意味で、USSSの開催は非常に重要な意義を持っていると感じた。CUBESATに関しては、日本の大学の開発状況はUNISEC等でお互いに知ることができるのだが、アメリカの大学の状況については基本的にWEBを通してしか知る手段がなかった。今回の会議でアメリカの大学と議論して、彼らがどんな事をしているのか、どんな状況にあるのか、を知ることができた。結果的にはアメリカ側のCUBESAT開発は日本と比べるとまだ進んでいないことが分かったのだが、開発済みの大学、開発中の大学ともに、「CUBESAT開発コミュニティー」を作ってCUBESATを広めたい、という考えを共有し、そのための方針について話し合えたのは非常に有意義であったと感じる。
一方で、USSSという会議は、解決すべき問題点も持っていると感じた。会議は基本的に一年に一回しか行われず、しかも参加する人間は年毎に変わってしまう事から、責任をもった議論が行われにくいように思う。また、国が違うため会議後の議論はメーリングリストによることが多く、その場合も責任ある発言がなされにくい。会議中も盛んに言われていた「具体的なスケジュールを発表する」事がこの問題に対する一つの解決策ではあるが、これだけでは十分とは言えない。
他には、新しいプロジェクトが生まれにくくなっている、という問題点もある。USSSが始まった頃は、CANSATやCUBESATという新しいプロジェクトが次々と提案され非常にエキサイティングな会議だったと聞くが、ここ数年を見てみると、新しいプロジェクトとして提案されたのはQUESTくらいで、しかもそのQUESTの進捗状況はあまり芳しくない。
このような現象がおきる原因としては、1. 上でも述べたように、議論がおもに電子メールで行われていて、責任を持った発言がなされにくい 2. 各大学はそれぞれ自分だけのプロジェクト(CANSAT等)を持っていて、他大学と共同のミッションを行う人的余裕、時間的余裕がない などが考えられる。1.については、各ディスカッショングループで決まった事項に関して、数ヶ月単位で報告の義務を課す、など運営者側からのアクションが必要だと感じる。2. については、特に日本側の大学がそのような状況にある。CANSATの開発に毎年数ヶ月を費やし、その合間にはCUBESAT開発を行っている大学が多く、なかなか他大学との共同プロジェクトが生まれにくい状況にある。(特に、我々東大では、現在CUBESAT2プロジェクトをメインプロジェクトとし、「One Slot Pod」(CUBESAT放出機構)の開発、CUBESATのメインテナンス作業、CANSATの開発、とプロジェクトが目白押しで、他大学と共同でプロジェクトを行う余裕がない。)
このような状況でUSSSという会議に(個人的に)望むのは、主に大学での宇宙開発の方向性に関する議論である(CANSAT,CUBESATという提案は、多数の大学に「超小型衛星」という方向を持たせることになった)。おおまかなその方向性のなかで、各大学の特徴を出していくことが重要で、大学間で独創性を競ってUSSSで発表するのもおもしろい。(初期のCANSATはこのような雰囲気だったのではないだろうか…?)
いずれにせよ、USSSという会議にはまだまだ改善の余地があり、また、これからの発展の可能性も秘めている。今年の反省を生かして、来年の会議が行われることを望む。