HomeUNISEC理事長挨拶

2024年 1月9日
桒原 聡文 (Toshinori Kuwahara) 東北大学准教授

UNISECの皆様へ

桒原 聡文 (Toshinori Kuwahara)

謹んで新年のご挨拶を申し上げます。
令和6年能登半島地震にて被災された皆様に、心よりお見舞い申し上げますと共に、皆様の安全と被災地の一日も早い復興を心からお祈り申し上げます。

2023年は2019年末から続いたコロナ禍が明け、従来の社会活動が徐々に復活した一年となりました。UNISECは引き続き創意工夫の下、活発に活動に取り組み、大変実り多い一年とすることができました。そして、皆様の日頃のご支援とご協力をもちまして、UNISECの設立20周年をお祝いする記念の年となりました。7月にはX-NIHONBASHI TOWERにて、20周年記念イベント「UNISEC 20周年記念 ~感謝の集い~」を開催させていただきました。改めまして、ご関係の皆様のご尽力に、深く御礼申し上げます。2024年も、皆様が新たな目標と熱い想いを胸に、新年をスタートされましたことを、切にお祈り申し上げております。

最初に、主要なイベントの実施状況についてご報告させていただきたいと思います。まず、 7月にはUNISEC社員総会・活動報告会を東京大学浅野キャンパスにて実に4年ぶりに対面にて実施致しました。私が理事長に着任致しましてから初めての対面での実施であったこともあり、大変記憶に残るイベントとなりました。ご出席いただきました皆様、ありがとうございました。昨年に引き続き、8月には能代宇宙イベント(共催)が現地開催されると共に、9月には米国でのARLISSが開催されました。12月にはUNISECワークショップを名古屋大学東山キャンパスにて対面(部分的にハイブリッド)で開催させていただきました。更にUNISEC Globalの活動もご紹介させていただきますと、2020年9月より開始致しましたUNISEC Global Virtual Meetingを毎月継続実施すると共に、11月にはNIHONBASHI SPACE WEEK 2023の期間中に、X-NIHONBASHI TOWERにて第9回UNISEC-Global Meetingを対面にて開催致しました。また、同期間中には、HEPTA-Sat Training、UNISEC Space Job Fair 2023、第8回Mission Idea Contestも実施致しました。

その他のUNISECの事業と致しましては、HEPTA-SAT トレーニングプログラム、CLTP(CanSat/CubeSat Leader Training Program)プログラム、UNISEC アカデミーの運営も実施致しました。HEPTA-SATトレーニングプログラムについては、南アフリカや台湾など複数の海外出張授業や国内での短期トレーニングを行い、 トレーニングキットの販売もいたしました。 また、 日本人宇宙飛行士候補者の基礎訓練用のトレーニングとして採用され、宇宙飛行士候補者へのトレーニングも実施しました。 CLTPプログラムについては、8~9月に日本大学船橋キャンパスとAOTS研修センターにて第12回を開催いたしました。そして、 UNISEC アカデミーについては、第三弾の準備を進めつつ、複数の特別講座を開催すると共に、見逃し配信のご希望に個別に対応をさせていただいております。

更に、引き続き受託事業にも精力的に取り組みました。2021年4月にJAXAと締結致しました『国際宇宙ステーション「きぼう」日本実験棟からの超小型衛星放出を用いた学術利用及び人材育成に係る包括的な連携協力の推進に関する協定』は2030年まで延長することとなり、継続的にその取り組みに力を入れています。これを基に、同じくJAXAからの受託事業として、① 国際宇宙教育事業であるKiboCUBEアカデミー事業と、② JAXAが有償で提供する「きぼう」からの超小型衛星放出機会を利用した、国内大学向け超小型衛星放出機会の提供事業J-CUBEに継続的に取り組んでいます。また、同じくJAXAより「2023年度超小型衛星のミッション保証技術の活用促進」に関する業務を受託し、超小型衛星のミッションアシュアランスハンドブックの追加改定、同ハンドブックの普及活動、アンケート調査、超小型衛星成功率向上ロードマップの策定、情報共有サイトの実装などに取り組んできております。また、これまでのUNISECにおける宇宙教育教材アセットに基づき、株式会社アクセルスペース様と「UNISEC-AXELSPACE Aerospace Engineering Program」の開発と実施に継続的に取り組みました。

国内では、昨年の6月に第34回ISTS及び12th Nano-Satellite Symposiumが久留米市にて現地開催されました。新型コロナウイルス感染症が5月に「5類感染症」となったこともあり、コロナ禍明けの印象に残るイベントでございました。また、10月には第67回宇宙科学技術連合講演会が富山市にて開催されました。UNISECからも「超小型人工衛星のミッション・アシュアランス」に関するオーガナイズド・セッションを提案・開催させていただき、非常に大勢の方々に足を運んでいただき、活発な議論をさせていただくことができました。

このように、UNISECは2023年も、1年間を通して非常に高い活動レベルを維持できたと思います。特に現地開催の実現には、ご担当の教員の皆様に加え、会場やホスト校の皆様の多大なご尽力があって実現したものです。この場をかりて、ご尽力、ご協力いただきましたご関係の皆様に、改めて深く御礼申し上げます。

2024年について少し先取りしてみたいと思います。

上述したUNISECのイベント、事業については2024年につきましても全て継続実施の計画となっております。2024年はUNISEC Takumi Conferenceも実施の予定であり、今回につきましてもUNISEC挑戦賞の公募を行う予定ですので、奮ってご応募(自薦・他薦)いただけますと幸いです。UNISEC Academyの第三弾と致しましては、ロケット工学に関する講義シリーズの実装の検討が進行しております。安全性、そして成功率の向上に寄与できればと考えております。

幾つかの新しい課題や挑戦もございます。まず、ARLISSについては、渡航費の高騰により安全な運用体制や活動規模の維持に課題がございます。学生を中心とした実践的宇宙工学実験の大変素晴らしい機会です。少しでもその活動を支援できるよう、クラウドファンディング等の活用も視野に入れつつ、対応を検討致したいと考えております。ご支援に対しましては、「ロケット実験活動報告書」等で成果をご報告させていただくなどの工夫と共に、OB/OGの皆様との技術交流の促進のきっかけにもなればとも考えております次第です。

次に、UNISEC加盟団体の技術シーズに関する情報の整理と相互共有、一般の方々への情報発信にも新たに取り組む計画です。昨年末の教員会議にて議論させていただき、「UNISEC技術マップ」として、まとまった文書のような形で整理する方向で調整をさせていただく予定でおります。

また、UNISEC学生会員の皆様にとって、宇宙工学分野の最前線でご活躍されている皆様との直接的な交流の機会は何ものにも代え難いものと考えております。希望者を募った少人数での「Round Table」的な交流会の定期開催についても、検討を進めたいと考えております。もしお声がけさせていただくことがございましたら、是非ご協力をお願いできますと大変幸いです。

更に、小・中・高校生への宇宙工学教育の重要性についても引き続き検討を重ねて参りたいと思います。宇宙に憧れ、宇宙を志す若手人材の育成が、5年後、10年後の日本の宇宙開発の原動力となることは間違いありません。大学生を中心にあらゆる年代の皆様が共に集えるコミュニティを形成していけるよう、皆様にお力添えいただけますと大変幸いです。

2024年は益々月との距離が近づいていくことになります。直近では、今月20日に小型月着陸実証機SLIMの月面着陸が予定されています。ispace様のHAKUTO-R M2ミッションを含め、国内外で多数の月面着陸プロジェクトが進行しており、多くの打上げが予定されています。Artemis IIの打上げの可能性もあります。更には、H3やAriane 6、SpaceX社のスターシップ等に代表されるように、世界中の多数の大小新型ロケットの打ち上げ実験も実施されることが見込まれています。成功を祈っております。

最後に、UNISECは、”やりたい”が見つかる場所、やりたい事ができる場所、将来に手が届く場所、夢が生まれ実現する場所、そういう存在でありたいと思います。 UNISECの価値は「学生たちの元気さと熱気が、参加者を魅了し続けているかどうか」に依る、という初代理事長の八坂教授のお言葉が原点であり、道標だと思っています。昨年のUNISECワークショップには130名を超える会員の皆様が集っていただきました。教員会議も大変活気のあるものでしたし、学生会員の皆様の間での交流も非常に盛んな様子でした。今回は特に、ロケット・ワーキンググループの皆様の活気が増してきているように感じました。コミュニティ間の交流が益々促進されていくとよいですね。2024年のUNISECワークショップは、より大勢の皆様に集っていただき、更なる熱気の高まりを生む、そのような機会となりますことを楽しみに致しております。企業様、そして「宇宙文化圏」のコミュニティの皆様との連携も、更に強化して参れたらと考えております。

以上をもちまして、2024年の年始のご挨拶とさせていただきます。

皆様の健康と安全、そして社会の平穏を心からお祈り申し上げております。
本年も何卒宜しくお願い申し上げます。